このディスクリートMOSFETステッピングドライバは、1つのバイポーラステッピングモータを制御できます。8V~50Vの広い動作電圧をサポートし、ヒートシンクや強制冷却無しで、1フェーズあたり最大連続4Aを供給できます(強制冷却時は6A)。SPIインタフェースから、電流制限、ステップモード(フルステップから1/256までの9段階)、減衰モード、脱調検出の設定ができます。逆起電力フィードバックにより、より高度な制御や脱調検出アルゴリズムを提供しています。さらに、逆電圧、低電圧、過電流保護機能を提供しています。
Pololu ハイパワーステッピングモータードライバ 36v4は、Texas InstrumentsのDRV8711ステッピングモータドライバICと外付けMOSFETとの組合せにより、8V~50Vの動作電圧で大型のバイポーラステッピングモータの制御を実現しました。機能の詳細や使用方法はについては、DRV8711データシート(英語)を参照してください(ドライバの基本機能や設定を簡単に使える、Arduinoライブラリを提供しています)。
外付けのデュアルHブリッジにより、ヒートシンクや強制冷却無しで連続電流4A/フェーズを供給できます。(十分な追加冷却があれば、1相あたり最大約6Aの電流を供給できます。安全に使用するためにも、重要な詳細情報について下記の「消費電力の考慮点」の章を参照ください。)
表面実装の部品は、すべて実装済で出荷されます。ただし、スルーホール部品の取付にははんだ付けが必要です。次のスルーホール部品が付属しています。
小さなスルーホールを使うと、ピンヘッダは小さく分割して接続することで、ブレッドボードや0.1インチメスコネクタ、ジャンプワイヤと接続することができます。大きなスルーホールは、端子台を取付けて、電源やモータのケーブルを取付けるのに便利です。モーターケーブルやその他の部分も、直接ハンダ付けしてコンパクトに使用することもできます。
PIN | 説明 |
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VIN | 8 V ~ 50 V 電源接続 (逆電圧保護 40Vまで) |
VM | 逆電圧保護MOSFETを経由した、モーター電源へ接続できます。(下の回路図を確認してください。) 逆電圧保護した電源を他のシステムへ供給するのに使用できます。このピンを、隣のGNDピンと一緒に使用して、外付けの電解コンデンサを取付けるのに便利です。 |
GND | モーター電源と制御のリファレンス接地(GND)です。 制御元と必ずGNDを共有する必要があります。 |
AOUT1 | モーター出力: A相+ |
AOUT2 | モーター出力: A相- |
BOUT1 | モーター出力: B相+ |
BOUT2 | モーター出力: B相- |
V5 (OUT) | 5V出力:DRV8711の内部レギュレータの出力電圧に接続できます。このレギュレータは10mAしか出力できないため、ドライバ入力のHigh(5V)やオープンドレイン出力の電源プルアップくらいにのみ使えます。 外部機器への電源供給は想定されていません。 |
IOREF | ドライバの信号出力(BEMF以外)は、全てIOREFにプルアップされたオープンドレイン出力のため、このピンに制御システムのロジック電圧(3.3V系なら3.3V)を供給する必要があります。5V系であれば、隣のV5(OUT)ピンへ接続することができます。 |
STEP/AIN1 | この入力を変更すると、モータ電流が、遷移テーブルに従い1ステップ分アップまたはダウンします(モータが無効の状態でも動作します)。ステッピングモータは、SPI経由でも制御でき、このピンはオプションです。 PWMモードでは、AIN1として機能し、AOUT1出力の状態を直接制御します。 |
DIR/AIN2 | ステッピングモータの回転方向を決める入力ピン。回転方向はSPI経由で制御でき、このピンはオプションです。 PWMモードでは、AIN2として機能し、AOUT2出力の状態を直接制御します。 |
SDATO | SPIデータ出力 (MISOとも表記されます)このピンは、IOREFへプルアップされたオープンドレイン出力です。 |
SDATI | SPIデータ入力 (MOSIとも表記されます) |
SCLK | SPIクロック入力 |
SCS | SPIチップセレクト入力。SPIバス上に1台しかない場合でも、SPI通信にはこのピンのロジック遷移が必要です。 |
SLEEP | 標準でプルダウン(Low・0V)にドライバで設定しています。モータドライバ回路は停止し、アナログ回路が全て低消費電力スリープモードになります。デジタル回路は、スリープモードで動作しているため、シリアルインタフェース経由でアクセスできます。必ずHighにする必要があります。 |
RESET | チップリセット入力。この入力をHighにすると、インデクサやデバイスのレジスタを含む全ての内部情報がリセットされ、ドライバ出力が停止します。 注意:RESETピンは、デバイスがスリープモードの間は機能しません。 |
FAULT | 過電流、プレドライバ(ゲートドライブの過電流)、過熱、低電圧の問題が発生しているときに、オープンドレインのLow出力になります。このピンは、IOREFへプルアップされており、通常はHighです。 |
BIN1 | 外部PWMモード時、BIN1が、BOUT1出力の状態を制御します。インデクサモード(ステッピングモータで使用する場合)は使用しません。 |
BIN2 | 外部PWMモード時、BIN2が、BOUT2出力の状態を制御します。インデクサモード(ステッピングモータで使用する場合)は使用しません。 |
STALL/BEMFV | 内部ストール(脱調)検出時は、ストール(脱調)が検出されると、Low出力になります。外部ストール(脱調)検出時は、有効な逆起電力を測定するとLow出力になります。オープンドレイン出力で、IOREFへプルアップされています。 |
BEMF | モータの逆起電力(back EMF)に対応したアナログ出力。この出力をマイコンでさらに処理して、より高度な制御やストール(脱調)検出アルゴリズムを実装できます。 |
詳細は、DRV8711データシートを参照してください。
ハイパワーステッピングモータードライバ 36v4は、簡単なステップ(STEP)と方向(DIR)インタフェースで制御できますが、SPIインタフェースを通して設定を有効にする必要があります。そのため、制御用マイコンは、SPIマスタ(SPIペリフェラルまたはソフトウェアSPIとして)動作しSDATI, SCLK, SCSピンへ接続する必要があります。SDATOと/FALUTピンは、必須ではありませんが、一般的にはエラー状態を監視するために使用することをおすすめします。
ハイパワーステッピングモータードライバ 36v4は、5V系で使用するためにIOREFへ供給するための5Vレギュレータを内蔵しています。V5とIOREFを接続するためのジャンパーピンが付属しています。または、よりコンパクトな接続方法として、ピン横のジャンパーをはんだ付けすることもできます。(下の図のハイライト部分)
Pololuから提供される、High-Power Stepper Motor Driver library for Arduinoにより、基本的な機能と動作をArduinoやArduino互換機で使用できるようになっています。このライブラリには、いくつかのスケッチサンプルが含まれています。
ハイパワーステッピングモータードライバ 36v4は、連続4A/1相を標準的な条件下で供給できますが、実際に供給できる電流は、モジュールをどれだけうまく冷却できるかによります。ドライバの基板は、MOSFETから熱を逃がすように設計されていますが、ヒートシンクや強制冷却をを追加することで性能を向上させられます。(逆に、周囲温度が高いや、ケース内での動作で放熱が制限される場合は性能が低下します。)十分な冷却時は、30mΩの電流検出抵抗の許容電力1Wまでの、1相あたり連続6Aを供給できます。
警告: このドライバは、実質意味のある過熱遮断機能はありません(DRV8711は、過熱保護されていますが、実際に最初に過熱するのは外付けのMOSFETです)。過熱状態は、モータドライバへ恒久的な損傷を与える場合があります。MOSFETの温度が、140度以下になることを確認できない限り、電流制限を4A(または放熱が少ない状況ではそれ以下)より大きな値に設定しないことを強くおすすめします。
注意:ドライバが起動すると、電流制限設定値は最大値(~18A)になります。出力を有効にする前に、ステッピングモータとドライバの両方を適切な値にしてください。
本製品は、やけどするのに十分なほど熱くなることがあります。本製品と接続している他の部品を取り扱うときは注意してください。
ドライバの電流制限は、SPIインタフェースで設定します。ステッピングモータが、フルステップモードでステッピングしてない状態にすることで、マルチメーターを使用して1つのコイルに流れる実際の電流を測定することで、正しく設定されているか確認できます。この方法で測定した電流は、設定した制限電流の約70%になります。電源から流れる電流を測定しても、一般的にはコイル電流を正確に測定できませんので注意してください。ドライバへの入力電圧は、コイル電圧より高くなる可能性があり、電源で測定される電流はコイル電流より大幅に低くなる可能性があります。(ドライバとコイルにより、降圧スイッチング電源のように動作します。)また、モータの設定電流に必要な電圧に対して、供給電圧が非常に高い場合にデューティーサイクルがとても低くなり、平均とRMS電流との間に大きな差が発生します。